はじめに
フランスの現代作曲家オリビエ・メシアンの作品の中に「鳥のカタログ」と言うピアノ曲集があります。全曲を通すと2時間半ほどかかる大曲ですが、それぞれに鳥の名前がついた13の独立した曲から成り立っていて、CDならば、どこから聴きはじめても、どこで止めても、何の不都合も生じない実に楽しいピアノ曲集です。この「鳥のカタログ」に限らず、メシアンには他にも鳥が登場する曲が沢山あります。と言うよりは、大部分の作品の中に、何らかの形で、必ずと言って良いくらい鳥が登場します。鳥のさえずりはメシアンにとっては欠くことのできない音楽言語であり、インスピレーションの源泉でした。
メシアンは、第二次大戦中ドイツ軍に捕虜として囚われていた時に作曲した「世の終りの為の四重奏曲」が、後に脚光をあび有名になった作曲家ですが、この出世作「世の終りの為の四重奏曲」の中でも既に小鳥が活躍しています。
「世の終りの為の四重奏曲」は、ピアノ、ヴァイオリン、クラリネット、チェロ、と言う変わった組合せの四重奏曲で、演奏会毎にこの組合せの四重奏団を特別に編成しなければなりません。アンサンブル・タッシと言うグループは、ピアニストのピーター・ゼルキンが、リチャード・ストルツマン(Cl)、アイダ・カバフィアン(Vn)、フレッド・シェリー(Vc)と一緒に、この四重奏曲を演奏する目的で作った室内アンサンブルですが、武満徹の「カトレーン」もこのタッシのメンバーによって演奏されることを前提に作曲されました。「カトレーン」はこの編成の四重奏団とオーケストラの為の協奏曲風の音楽で、この曲では、独奏部分を四重奏団が受け持つ、4小節単位で景色が変化してゆく、音程的にも4度の音程が大切にされていると言うように、「クァトレ」つまり4と言う数が重要な意味を持っています。これと同じように武満徹には5(ペンタ)と言う数字が重要な意味を持つ作品もあります。実はそれが「鳥は星形の庭に降りる」と言うタイトルの鳥の曲で、題名の星形(ペンタゴナル)が暗示しているように、作曲技法的にもはっきり5と言う数を意識して作られた作品です。
音楽の中の鳥から「鳥のカタログ」の作曲者メシアンを連想し、メシアンから「世の終りの為の四重奏曲」を、「世の終りの為の四重奏曲」からタッシを、タッシから武満徹の「カトレーン」を、「カトレーン」から「鳥は星形の庭に降りる」をと連想は果てしなく続きます。私はこんな形で私が愛する小鳥と音楽を対象に、連想ゲームを楽しみつつ、その過程をまとめてみることに致しました。連想のおもむくままに、鳥たちのように自由に翔びまわってみたいと思います。
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